それって長期投資? みんなが思うほど単純ではない株式の「投資期間」
株式投資の王道は「長期投資」と言われます。
しかし「長期投資」の「長期」とは何年くらいの「投資期間」を言うのでしょうか?
3年?、5年?、10年?
実は「株式の投資期間」というのは、多くの人が思っているほど単純ではないのです。
こんにちは、才出やすかです。
「賢者のポートフォリオ メンバーズ倶楽部(略称:賢者クラブ)」の案内役を務めさせていただいております。
「あせまね日和」は同クラブの会員向けのブログですが、今回は一般にも公開させていただきます。
株式の「長期投資」は複利の恩恵が大きい
以前に「あせまね日和」で
「人類最大の発明? 格差社会の元凶? そもそも日本では「複利」を理解していない人が多い!」
というタイトルで
「投資期間が長くなるほど、利率が高ければ高いほど、増幅の幅が大きくなる」
と複利の性質を解説させていただきました。
(興味のある方は、このリンクから当該のブログもご覧下さい。)
一般に株式は期待リターンの大きな資産ですから、複利による長期投資の恩恵は大きなものとなります。
ところで、この場合の「株式の投資期間」ですが、
ここでは「銘柄選択の如何を問わず、株式という資産に投資し続ける期間」を意味しています。
このブログでは、これを「資産としての投資期間」と表現させていただきます。
「資産としての投資期間」で株式の長期投資を捉えた場合は、経済の長期的な成長に複利の効果が加わり、10年よりも20年、20年よりも40年と、その投資期間は長いほど望ましいと言えます。
もう一つある「株式の投資期間」の概念
世の中には様々な株式投資家がいます。
一旦購入した株式を何年も保有して、その間に配当金を受け取り、また一部の人は株主総会にも参加するというのが一般的な株式投資家のイメージでしょうか?
その一方で、一日に何回も売買を行い、その日のうちに購入した保有株はすべて売却して手仕舞うような取引を行う「デイトレーダー」と呼ばれる方たちも株式投資家であることは間違いありません。
しかし「デイトレーダー」の方たちは、その投資を何年続けても「長期投資家」とは言われません。
何故でしょうか?
それは、「株式の投資期間」にはもう一つの概念があるからなのです。
その概念というのは「銘柄投資期間」です。
以下のようなケースで考えてみましょう。
① Aさんは、株式Xを100万円購入して、そのまま2年持ち続けた
② Bさんは、株式Xを100万円購入したが、1年経過したところで全部売却。その時点で株式Yを100万円購入して、そこから1年持ち続けた
この場合の「銘柄投資期間」は、Aさんが「2年」、Bさんは「1年」となります。
Aさんのほうが長期に投資したということになるのです。
では、以下の場合はどうでしょうか?
③ Cさんは毎月のように投資している株式を全部入替え、2年が経過した
例示が増えてきました。
ここらで「銘柄投資期間」がどのように測定されるかを示したほうが良さそうですね。
売買回転率が決め手の「銘柄投資期間」
「銘柄投資期間」は以下の式で表されます。
上の式の分母の「売買回転率」は、「期首の購入額」、「期中の売却額」、「期中の購入額」、「期末の保有額」の合計を「期中の平均保有額」で割り、さらに半分にした数値になります。
下の式は、上の式の分母分子を「資産としての投資期間」で割ったものです。
これまでの例に当てはめてみましょう。
①のケースに上の式を当てはめると、
「期首の購入額=100万円」、「期末の保有額=100万円」、「期中の平均保有額=100万円」で、
「売買回転率」
=(「期首の購入額」+「期末の保有額」)÷「期中の平均保有額」÷2
=(100万円+100万円)÷100万円÷2
=1
「資産としての投資期間」の2年を「1」で割って、「銘柄投資期間」は「2年」です。
②のケースでは、
「期首の購入額=100万円」、「期中の売却額=100万円」、「期中の購入額=100万円」、「期末の保有額=100万円」、「期中の平均保有額=100万円」で、
「売買回転率」
=(「期首の購入額」+「期中の売却額」+「期中の購入額」+「期末の保有額」)÷「期中の平均保有額」÷2
=(100万円+100万円+100万円+100万円)÷100万円÷2
=2
「資産としての投資期間」の2年を「2」で割って、「銘柄投資期間」は「1年」となります。
③のケースでは下の式を使います。
1年当たりの平均売買回転率が「12/年」となりますから、その逆数の「年/12」、すなわち「1か月」が「銘柄投資期間」というわけです。
③は典型的な短期投資ですね。
「銘柄投資期間」で見た長期投資
このブログの冒頭で株式の「資産としての投資期間」は長ければ長いほど望ましいと述べました。
では、「銘柄投資期間」で見た場合に望ましい投資期間はどれくらいなのでしょうか?
デイトレードを否定するわけではありませんが、株式投資を専業とするのでもない限り、その実行は難しいでしょう。
一方で、どのような事業にも栄枯盛衰があり、同じ銘柄を何十年も保有し続けるのも決して合理的とは言えません。
自らが利用できる情報と時間の中で、企業のファンダメンタルに対して割安な銘柄、あるいは他に抜きん出た将来性のある銘柄を選び、その事業が花開くまでの期間を株主として応援する。
そうした姿を個人投資家のあり方と捉えるのであれば、「銘柄投資期間」は短くて3年、長くて10年といったところでしょうか?
売買回転率に置き直せば、年に1/10~1/3が入れ替わるような株式投資です。
株式投資信託の「銘柄投資期間」は?
以上は個別株式の投資についての話でした。
一般の株式投資信託やETF(上場投資信託)に投資する場合はどうでしょうか?
もうお分かりかと思いますが、株式投資信託への投資が「銘柄投資期間」の面から長期投資になるか否かは、投資家がその投信を保有する期間には寄りません。
銘柄の入れ替わりの激しい(売買回転率の大きい)運用をする投信を保有するのであれば、例え10年保有するとしても、その投信への投資は短期的な株式投資にほかならないのです。
投信の売買回転率は運用報告書に記載されていることが多いので、確認をしてみましょう。
株式投資体験アプリで3~5年の模擬投資
ネット上には株式投資を模擬体験できるツールがありますが、そのほとんどはリアルタイムの市場データを用いたものです。
これらを使って投資期間3年の投資を体験するには、実戦の投資と同じく、これから3年という歳月を費やさなければなりません。
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(2020年7月6日 才出やすか)